雑想 「起こしますか、またぎますか」

　いつものように、友達と自転車で家までの道を走っていたところ。

　ふと道の真ん中に、大きな何かが落ちているのが見えてきました。近づいてみると、それは人でした。

 

　かなりお酒を召しておられたのでしょう、気持ちよさそうに寝ています。後ろを振り返るとちょうどタクシーが迫っていました。ので、咄嗟に叫びました。「危ない！」

　タクシーは大きく避けて走っていってくれました。その声を聞きつけた通行人が集まってきて、私は酔っ払いを助けるべく声をかけました。友人はその間に警察に電話をかけてくれました。

　が、酔っ払いはいきなり起き上がると、私が「警察が来るから事情を話してくれ」と懇願する声を無視して夜の街に消えていきました。

 

　そういえば、以前新宿駅で階段の上り口のところで同じように寝ていたおじさんがいたことを思い出しました。

　その時、道行く人々はさも迷惑そうに、そして当然のようにおじさんをまたいで歩いていました。

　誰一人声をかけるものはなく、私はいたたまれなくなって駅員を呼んだのでした。

 

　酔いの回った状態で地面に寝転ぶのはとてつもなく心地いいと聞きます。気持ちは良くわかりますが、そこで他人のことを少し考えてあげてください。

　そして、誰かが助けてくれること、気にかけてくれる事を当然のことだと思ってはいけない。

　私たちは特別じゃない。でも、けして一人でもないんですよ。